大判例

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仙台高等裁判所秋田支部 昭和33年(う)24号 判決

原判決挙示の証拠によれば原判示事実は優にこれを認定することが出来るし当審で取調べた証拠をこれに附加して考察すれば一層右認定に誤りないことを確認しうる。所論は名誉毀損罪における公然性に関し私人の住宅内において個人間の対談中になされた名誉毀損該当の供述は公然性がないことになり従つて違法性の認識を欠如し名誉毀損の故意がないことになる旨主張するので按ずるに名誉毀損罪は他人の社会的地位を害するに足るべき具体的事実を公然告知するにより成立する犯罪であつて公然事実を告知するとは不特定多数人の視聴に達しうベき状態において事実を摘示することであり本件は成田何五郎が被告人方庭先の燻炭囲の菰に放火したことに関し被告人方において右何五郎の弟成田浪造及び村会議員にして火事見舞にきた佐々木常夫に、又成田何五郎方において同人の妻キネ長女せつ及び近所の成田やよ、成田ふこ、成田ミセ等の居る面前で被告人が問はれるまゝに「右何五郎の放火を見た」、「火が燃えていたので同人を捕えることは出来なかつた」旨述べたのであつて右何五郎放火の噂は村中相当にひろまつた状況である。されば被告人は特殊の関係により限局せられた者に対してのみ事実を摘示したものではなく不定の人に対してなしたものというべく要するに被告人の行為は事実の摘示を不定多数の人の視聴に達せしめうる状態において行われたものとなすべきで右事実の摘示が質問に対する答としてなされたものなりや否は犯罪の成立に何等の消長を来さないものというべきである。されば右の如く私人の住宅で対談中になされたとの理由で公然性を否定したり違法性なしとか犯意なしとかいう主張は採るをえない。なお爾余の所論は独自の見解に立脚して原判決を徒らに攻撃するもので採用の限りでない。論旨は理由がない。

(裁判長裁判官 松村美佐男 裁判官 小田倉勝衛 裁判官 松本晃平)

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